本を作る意味

最終更新: 2019年5月27日

書籍を作るのは私の大切な仕事ですが、最近は出版社などメディアからの制作依頼と同じくらい、著者からのご相談があります。本を出版したいという思いは、何かを作り出す職業の人が、どこかの時点で必ず抱くものなのかもしれません。


では、どうして本を作りたいのでしょう。

ウェブサイトを持つことも、SNSで自分の考えを発信することもこれだけ簡単になった今、手間も時間もコストもかかる紙の本を、わざわざ作る意味はどこにあるのか?


本が売れない、と言われて久しいですが、その中でよく売れている本や話題になる本は、ある問題を解決する方法がはっきりわかりやすく(ときにはあざといまでに)提示されているものが多いですね。もちろん全部が全部、そういう方向性にする必要はないですが、本を作る意味を考えたときに、そこに答えのヒントがある気がします。


きちんとしたクオリティの本を出版するには、撮影、スタイリング、エディトリアルデザイン、執筆、編集、校正、制作管理、印刷、マーケティング、広告、販売、流通と、さまざまなプロの手を借りることになります。著者のコンテンツをプロの技術のリレーで磨き上げて世の中に出すので、その素材がそれに足るものなのか、厳しく審査されるのも当然といえば当然です。


本を出したというと周りの人が喜んでくれる、すごいねと言ってくれる、著者になったということでステージが上がる。そういう自分にベクトルの向いた意味も存在していいのです。でももちろんそれだけではダメで、誰かのある切実な悩みを、自分の持っている「これ」で解決できる、もっとよくできる、というメッセージが最初に伝わるかどうかは、とても大切なことです。


こんな本にしたい、こんな人に届けたい、これを出すことで世の中を少しでもよくしたい。それは誰もが考えていると思います。そのときのベクトルが「自分をわかってほしい」ではなく、具体的に「こんな人のこんな問題の、こんなシーンでこれを使ってほしい」という方向になっているかどうか。ブログやウェブサイトは自己発信ツールと呼ばれます。それに対して出版は、問題解決ツールになっているかどうかが問われているということを、本を出したいと考えている方は、どこかで意識しておくとよいと思います。最初に見せるのは、問題意識というか、問題解決意識。自分ファーストではなく、あくまで読者ファースト。


さらに言うと、単に「本を出したい」という人より、「本を出したあと、次はこうしたい、こうなりたい」というところまで考えている人の方が、よい本、売れる本が作れるのはほぼ間違いのない事実です。このことについては、また別の機会に書きたいと思います。