シティポップとかっこよさの正体
真面目な話が続いたので、今週はちょっと息抜きの話題で。
山下達郎さんの37年ぶりのライブ・ベスト盤『JOY 2』が話題になっています。達ちゃんは今も好きですが、中学2年の時にラジオで聴いて衝撃を受けた「RIDE ON TIME」は、自分のライフタイム・ベストテンに間違いなくランクインする曲で、初めて聴いたとき、なんてかっこいい音楽なんだろうと、本当に何百回も繰り返し聴きました。

中学1年のときにやはりラジオで聴いた、松原みきさん「真夜中のドア〜stay with me」にも不思議なほど惹きつけられ、これも何百回聴いても飽きることがなく、若い頃から今に至るまで、流れてくると、あるいはカラオケに行くと、必ず歌ってしまいます。
なぜそんなに夢中になったのか? ヴォーカルも歌詞ももちろん好きなのですが、当時からあんなに惹きつけられた本当の理由は、今になって思えばおそらく「グルーヴ感」。中学生の私のボキャブラリーには、まだそんな言葉はなかったのですが、間奏のほんの一節だけで、楽器の知識や音楽の素養が何一つなくても無条件に「かっこいい!」と感じる、あの感覚です。
グルーヴとは、メロディや歌詞そのものではなく、ベースやドラム、ギターも含めた音が互いに呼吸を合わせて生み出す、"うねり" や "ノリ" のことなのだと思います。理屈より先に、体のほうが勝手に反応してしまう——そういう種類のかっこよさ。
EPO「DOWN TOWN」の陽気なイントロを聴くと、仲間とはしゃいだ賑やかな土曜日の夜に、一発で引き戻されます。YMO「RYDEEN」はヴォーカルも歌詞もないのに、頭の中で鳴るだけで体が動く。SHOGUN「Lonely Man」「男たちのメロディー」、寺尾聰「SHADOW CITY」「ルビーの指環」、南佳孝「スローなブギにしてくれ」などなど、今聴いても、冒頭から心を掴まれるというか、ホントかっこいいなぁと思います。キリがないですが、これはもう、グルーヴそのものが人をつかまえているのですね。
当時は、それが特別なものだとは思っていませんでした。つけっぱなしにしていたラジオやよく見ていた歌番組から、ごく当たり前に流れてきて、ただ浴びるように聴いていただけです。
何十年も経った今、その頃の音楽が「シティポップ」と名づけられ、世界中の若い世代に "発見" されて、再び多くの人に聴かれるようになりました。世界的なブームの火付け役になった「真夜中のドア」も、「プラスティック・ラブ」も、海の向こうの人たちが新しい宝物のように聴いている。それをほぼ子どもの頃、何気ない日常の中で聴いていたのだと思うと、とても贅沢なことだったのだなと感じます。思えば、季節ごとの化粧品のキャンペーンソングをはじめ、車や航空会社、ビールのCMのタイアップソングも、ほとんどシティポップでしたもんね。
流行の歌は、メロディをなぞれば誰でも口ずさめます。でもグルーヴ感というものは、本物にしか宿らない気がします。何十年も残っていくのは、単なるキャッチーさやヒットチャートの順位ではなく、作り手が込めた密度、言い換えれば、グルーヴの深さなのかもしれないですね。
そしてこれは、たぶん音楽に限った話ではありません。長く読み継がれる文学も、時代を超えて愛される仕事も、派手さや目新しさではなく、確かな「グルーヴ」を持っているものが、静かに残っていくのだと思います。私たちが日々つくる発信や仕事にも、きっと言えることなのでしょう。
シティポップいいよね!と言われ始めた頃に作ったSpotifyプレイリストがあるので、置いておきます。年代的な偏りや個人的趣味が入っているのでマイナーな曲もありますが、よろしければお楽しみください。
こういうプレイリストが「懐メロ集」にならない時代が来るとは思ってもみませんでした。(余談:歌謡曲寄りですが、百恵ちゃんが陽水を歌う「Crazy Love」とか、研ナオコさんの「ボサノバ」とか、今聴いてもかっこいいです)
ちなみに達郎氏は、ご自身の歌を今もSpotifyで配信していないので「RIDE ON TIME」は入っていないのですが、「DOWN TOWN」(作曲)、「プラスティック・ラブ」(編曲)、「夢で逢えたら」(書き下ろし。歌は吉田美奈子さん)——と、達郎グルーヴはちゃんとこのリストの中に流れています。
あなたが子どもの頃、何気なく聴いていて、今も少しも色褪せない一曲は何ですか? ライフタイム・ベストテンを作るとしたら、何がランクインしますか?
どうぞよい週末をお過ごしください!




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