クリエイターズ・インタビュー:田原由紀子さん(リブコンテンツ代表)

今回から、私の周囲で活躍されている各界のクリエイターの方々にインタビューをお願いし、一問一答を掲載するページを始めたいと思います。第1回の今回は、オーダーキッチン会社(株)リブコンテンツの代表取締役社長、田原由紀子さんをご紹介します。

田原さんたちのつくるキッチンには「キッチンに立つ人を笑顔にする」静かな力が、確かにあります。写真提供/リブコンテンツ

田原さんは、2000年の創業以来、少数精鋭の女性スタッフを率い、使う人の好みやライフスタイルにぴったりのおしゃれなオーダーキッチンをつくり続けています。子育てをしながら20年近く、この業界の第一線で活躍するのは並大抵の苦労ではなかっただろうな、と思いますが、そんなことを微塵も感じさせないおっとりした物腰の中に、優しい強さを秘めた女性です。


−−−田原さんは、何のプロフェッショナルですか? ご自身の言葉で教えてください。

「キッチンに立つ人を笑顔にするプロ」です。


−−−お仕事をするうえでいちばん大切にしていることは何ですか?

「バランス」です。たとえば、キッチンのプランをしているときの機能とデザインのバランス。ご要望とご予算のバランス、スペースと収納力とのバランスももちろん。そして少し大きいものだと、自身が担当するプロジェクトとスタッフへの対応のバランス。そして、外の人と会う時間とこもって作業する時間のバランス、出張と在京のバランス、車移動と電車移動のバランスもありますね。車に頼ると運動不足が甚だしいので。


−−−いま手がけているプロジェクトのことを、可能な範囲でいいのでひとつ教えてください。

注文建築で計画中だったご自宅が東日本大震災で被害にあった方が、8年を経て新築マンションを購入され、そのキッチンをリブコンテンツにオーダーしてくださっています。通常は新築マンションでキッチンが自由になることはなく、お引き渡し後にリフォームという流れになるのですが、お客様のご事情を鑑みて、デベロッパーさんもゼネコンさんもとても親身になって、全員が「お施主さんのために」と気持ちを一つにし、一丸となって取り組んでいます。スタッフが担当しているので私は彼女の話を聞くだけなのですが、皆さんの熱い気持ちが感じられて、目が潤むこともしばしばです。

2016年3月に、渋谷区恵比寿から目黒区八雲にショールームを移転。1階は素敵なサロンとしても使用できるようになっています。写真提供/リブコンテンツ

−−−そちらのお宅のことだったのかな、当時、田原さんが被害のあった地域にお住まいのお客様のことをとても気にされていたのをよく覚えています。本当によかったですね。

では、次の質問です。田原さんがいま注目していること、凝っていることはなんですか? 仕事に限らずでOKです。

「つくり手の顔が見えるものと暮らすこと」かな。ショールームで年2回、器作家さんたちのプチ個展を開いているのですが、そこで手に入れたガラス作家さんの器のいくつかを、ほぼ毎日使っています。作家ものといってもほんの数千円で、食洗機でも洗える気軽なものですが、つくり手の顔が見える美しい器を手にすると、心が豊かになる気がします。先日も、娘が通っているアートスクールの先生たち(芸大生)の卒業作品展に行ったところ、その素晴らしさにワクワクして帰ってきました。そんな若手アーティストの作品をさりげなく飾ったりもしたいな、と思っています。

ショールームの2階にはまた別のスタイル・レイアウトのキッチンが。パウダールームや家具のオーダーサンプルも見ることができます。写真提供/リブコンテンツ

−−−心身の健康の秘訣、機嫌よく楽しく仕事をするためにやっていることや習慣、心の拠り所的なものは何ですか?

「1人お茶時間」ですね。家族は大抵、朝7時半には誰もいなくなるので、ほぼ毎朝20分くらいは、その日の気分に合わせたお茶を飲んでいます。また、やることが溜まっている日の朝、慌ただしい気持ちのままで出社せず、カフェに立ち寄ってお茶を飲んでから出社したり(幸い始業が9時半と遅いので)、緊張する打ち合わせの後、ちょっと奮発して景色のいいホテルのラウンジに寄って気持ちを落ち着けてから社に戻ったり。何かを考えたり、というわけではないので、一見時間の無駄ではあるのですが、なんとなくその時間で、それこそ「バランスをとっている」のかも。


−−−忙しいのにすごいなぁ。余裕を感じます。次に、「この職業だから知っている、みんなが知らないであろう、ちょっと役に立つこと」をひとつ教えていただけませんか?

わぁ、難しい質問。スタッフとも常々、「長年やってると、私たちにとってはあたりまえになっちゃっていて、意外なことで喜ばれたりビックリされたりするよね」と話しています。そうですねぇ……、究極的には「キッチンってオーダーメイドできるんですよ!」ということでしょうか。


−−−案外、「えっ! 全部オーダーで? そんなこと知らなかった〜!」っていう人、多いですもんね。

そうなんですよ。「ちょっと役に立つこと」ではないですが(笑)。


−−−では、「私はこんなことで人の役に立てる」と思うことを、ひとつアピールしてください!

仕事柄なのか、「聞き上手」「聞き出し上手」と言われることがあります。そういえば学生の頃からよく悩み相談をされることが多かったような……。特に解決策を提案したりはしないのですが、「こんなに話を聞いてもらえたのは初めて!」と言われますね。なので「人の役に立てる」といえば「悩んでいる人、迷っている人の話を聞くこと」かなぁ、と思います。


−−−田原さんの実現したい夢はなんですか? どんな大きなものでも、逆にささやかなものでも!

仕事のうえで将来実現したいことはたくさんありますが、それらは「夢」というより「目標」という感じでしょうか。最終的には、「オーダーキッチン」という選択肢があることをすべての人が知り、知ったうえで既製品かオーダーかを選ぶ世の中になってほしいです。そして、日本のキッチンの2割がオーダーキッチンになること。体感として、2割くらいの人は必要としていると思うのです。

プライベートでは、娘と一緒にヨーロッパの田舎町を旅すること。「いま、注目していること」とも通じますが、学生の頃、貧乏旅行で立ち寄った南仏の田舎町(村)の小さなギャラリーで出逢った絵を買えずに帰ってきたことを、いまだにときどき思い出すんです。「鷹の巣村」と呼ばれ、「フランスの最も美しい村」にも選ばれているゴルドという村ですが、絶対にいつかまた行ってみたい。ゴルド以外にもまた行きたい村が、そしてまだ行っていない村がたくさんあるので、ひとつずつのんびり訪れたいな……。「娘と一緒に」というのは、親離れできて私が1人で長旅ができるようになるまで待つと、ずいぶん先になってしまうので。


インタビューを終えて

お嬢さんはいま小学校高学年。夢の旅はまだしばらく先のようでいて、あっという間に実現してしまうかもしれませんね。

インテリア誌の取材で知り合った田原さんとはもう10年以上のおつきあいで、本づくりをご一緒したこともありました。そのときに考えたリブコンテンツさんのキャッチフレーズ「幸せをつくり出す、オーダーキッチンのある暮らし」を、いまもウェブサイトに掲げてくださっています。来年は創業20周年、同世代の女性として心から尊敬し、応援している田原さんの、今後のさらなるご活躍を楽しみにしております! ありがとうございました。


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