可能性と境界線
- Atsuko Tamura
- 7月25日
- 読了時間: 3分
更新日:8月2日
(2025年7月25日配信のニュースレターをこちらにも掲載します)
こんばんは。エディターの田村です。

先週、普段のターゲット外の業界・立場の方からのご依頼でも意外とうまくいった話を書きました(→「ターゲットではなくても?」)。改めて考えてみたのは、業界や肩書きが違っても、根底にある普遍的なニーズは同じだったということです。
「自分の価値をきちんと伝えたい」 「本当の想いを理解してもらいたい」 「理想的なお客様や仲間と出会いたい」 「長く愛され、信頼される存在でありたい」
これらの願いは、クリエイターも企業経営者も、おそらく多くの人が抱いているものです。提供している商品や手段は違っても、最終的に求めているものは驚くほど共通している。
今回最も重要だったのはそこだったから、同じプロセスで対応できたのかもしれません。その人の価値観を丁寧にヒアリングし、本質を見つけ、それを適切な言葉とビジュアルで表現する。これは、相手が誰であっても変わらない、私の核となる仕事なのだと実感した出来事でした。
では、「ターゲットではない」と判断する基準は、どこにあるのでしょうか? クリエイターの方なら、こんな基準が考えられるかなと思います。
1つ目は、価値観が根本的に合わない場合。 例えば、派手な売上やインスタントな解決法だけが欲しくて、お客様との信頼関係や長期的な価値提供に興味がない方。「丁寧なものづくり」や「心のこもったサービス」とは正反対の価値観ですよね。この部分がズレていると、お互いにとって良い結果になりません。
2つ目は、ご自分のスキルでは対応できない専門領域の場合。 例えば、医療や法律など、厳密な専門知識が必要な分野。以前、ファッション界の重鎮の方から書籍執筆の依頼をいただいたことがあるのですが、私よりもずっとスムーズにモードの文脈を形にできる、知り合いのファッション編集者を紹介しました。「想いを伝える」というニーズは共通でも、自分の知識で内容の正確性を担保できない領域では、別の専門家にお任せするのが誠実だと思ったからです。
3つ目は、求められているものとご自分が提供できるものが根本的にズレている場合。ニーズの方向性自体が違う場合です。 例えば、上品で洗練された作風が持ち味の方に「とにかく目立つ奇抜なデザインを」と依頼されても、お互いの期待値が合いません。ご自分の個性や得意分野を活かせない案件では、満足いただける成果は出しにくいものです。
逆に言えば、業界や分野が違っても、「価値観が合う」「ご自分のスキルで対応できる」「求められているものが提供できる範囲内」であれば、挑戦してみる価値があるということです。
ターゲット設定は大切だけれど、それに縛られすぎて可能性を狭める必要はない。ただし、自分の軸や価値観はしっかり持って、健全な境界線を引く。そのバランスが、長く続けられる仕事につながるのではないでしょうか。
ターゲットを絞る意味と、それを超えた普遍的なニーズ。皆さんは、どんな基準でお仕事の範囲を決めていますか?
どうぞよい週末をお過ごしください!
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