クリエイターズ・インタビュー:丸山佳枝さん(フィンガーフード・スペシャリスト)

最終更新: 2019年8月17日

今回は、日本フィンガーフード協会代表理事の丸山佳枝さんをご紹介します。数ある料理分野の中からフィンガーフードに着目、1000以上のオリジナルレシピを考案し、その普及に努めている丸山さんは、作り方の基本から実際のビジネス化までのノウハウを伝授するスクールでプロの育成に携わるほか、食品業界とのコラボレーションや海外のレストランへのレシピ提供、企業向けのケータリングビジネスなど、フィンガーフードに特化した活動の範囲をさらに広げています。好評発売中の新刊『THE FINGER FOOD BOOK 手軽につまめる小さなごちそう フィンガーフード』は、丸山さんのフィンガーフードに関する初の著書となります。

東京・目黒のクッキングサロンにて。撮影/千葉 充

今回出版された『THE FINGER FOOD BOOK』には、どんな思いを込められたのですか?

一部の愛好家にはよく知られているフィンガーフードですが、もっと広く一般の方々に知ってほしい、というのが出版の動機です。フィンガーフードとはどういったものなのか、こういった食のジャンルがあるということはもちろん、自分には作れない手間のかかる料理だと思い込んでいる方々に、意外と簡単に作れるんだと気づいてほしいという思いも込めています。もちろん、すべてが超簡単というわけではなく、それなりに手間のかかるものもあるのですが、普通のお店で手に入る材料や、冷蔵庫や食品庫に常備している食材を組み合わせて作れる点についても気を配りました。

本のまえがきにも書かれていますが、丸山さんがフィンガーフードの世界に魅了されたきっかけは、「いろんなものが食べられる小さな料理があればいいのにと思った」ことだったそうですね。

そうなんです。本当に最初の頃は、小さい器に料理を盛り付けて喜んでいました(笑)。そこから、器を使わずに独立させて並べたときにどうすれば美しくなるかを考え続けて、いろいろな組み合わせを編み出していきました。

今回の本の中には、技法別にフィンガーフードの作り方を解説した章があって、薄くスライスした野菜を巻いたり、カップ状にした食材を使ったりと、楽しい方法がいくつも紹介されています。

小さく握ったごはんに具材をのせるお寿司や、ピックで刺すピンチョス、バゲットにのせるカナッペなどは、みなさんご存じのものばかりですが、フィンガーフードの技法として考えると、幅広く多彩なレシピに応用できます。さまざまな使い方のできるサンドウィッチ用のパンを使ったレシピについても、かなりページを割いています。



フィンガーフードには、華やかなパーティフードということ以外に、注目すべき側面があるそうですね。

はい、彩りも味わいも豊かなひと口サイズを作るために、さまざまな食材を組み合わせるので、栄養バランスに優れているということがひとつ。それから、ご高齢の方や病気などで食が細くなった方、好き嫌いのある小さなお子さんなどにも、小さくて食べやすくカラフルなフィンガーフードは喜ばれます。また食事制限のある方のために、低カロリー、ベジタリアン、ヴィーガン、グルテンフリーなどのメニューにも対応できます。

フィンガーフード協会や講座には、どんな方が集まっていらっしゃるのですか?

東京・目黒のサロンには、生徒さんが日本全国から講座を受けに来てくださっています。地方で多いのは名古屋、大阪、北海道ですね。今、はるばる通ってくださっている韓国人の方もいらっしゃいます。鎌倉校では一時帰国中の海外在住者向けに短期集中講座を開く予定で、すでにロサンゼルス、フィレンツェ、北京からお申し込みいただいています。また、インスタグラムのフォロワーの方が6800人余りいるのですが、投稿を見て「こんなに可愛い料理があるなんて、こんな料理の見せ方があるなんて知らなかった。しかも自分で作れるんですね」という感想をよくいただきます。そこから入ってきてくださる方もいます。

丸山さんのインスタグラムはこちら

やはり、もともと食に興味があって意識も高い方が多いのでしょうね。

お料理の好きな人はもちろん多いのですが、好きなことを仕事にしたい、何か目標がほしいと思っているミセスの方に、フィンガーフードの世界は特に支持されていると感じます。私は代表として、夢や目標を持てるようなお手伝いもしたいと考えています。自分の夢がまだ漠然としていた生徒さんが、目的を持って行動し、評価や報酬を得ることで、自信やプロ意識も得て、成長していく姿をたくさん見てきました。のんびり生きていくのもいいけれど、みなさん本当は目標を欲しているんじゃないかな、と思うんです。「今のままでも幸せだから」「もう年だから」って、自分に言い聞かせて思いを抑え込んでいるのだとしたら、とてももったいない。才能もセンスもある方々がたくさんいらっしゃるので、さぁ奥さま、長い自分探しから目を覚まして、プロになりましょう!と言っているのが私かな、と思ったりします(笑)。

では、丸山さんご自身が、仕事をするうえでいちばん大切にしていることは何ですか?

今言ったことと重なりますが、プロ意識です。いろいろな分野や立場の方がお客さまなので、相手の求めているものは何かを常に考えながら、コミュニケーションを大切にしています。相手が企業の方なのか、生徒さんなのかによって、話し方や接し方、メールの書き方なども変えますし、ひとりよがりや押し付けにならないよう、常にお客さまの目線に立って仕事することを心がけています。

大活躍の現在に至るまでに苦労したこと、大変だったことはどんなことでしたか?

ビジネスをスタートしたての頃は、集客のコツをつかむのに少し苦労しました。だからこそ、自分で仕事を始めたばかりの卒業生たちには、その点も含めたアドバイスをするようにしています。今も続いている苦労といえば「生みの苦しみ」でしょうか。ものを生み出すことは喜びでもありますが、常に新しいものを作り出すアイディアを出し続けるのはやはり大変です。考え続けて切羽詰まってくると、フィンガーフードが夢に出てくることもたびたびありますよ。夢の中で「このアイディアいい、おいしそう、可愛い!」と言っている夢で、朝起きてすかさずメモして「あぁ、いい夢みたなぁ」って(笑)。

最近のプロジェクトのことを、ひとつ教えてください。

卒業生のみなさんが経験を積み重ね、実力をつけてきたので、以前私の方でお受けしていたケータリングビジネスを、彼女たちの働く場として提供し、企業と個人両方のお客さまに対応できるようになりました。ケータリングはプロ意識がないとできないので、卒業生たちの成長はとてもうれしいことでした。

みなさんに聞いている質問なのですが、普段、機嫌よく楽しく仕事をするために、やっていることや習慣はありますか?

いつも機嫌よく楽しいことだけじゃないですよ(笑)! たとえば、人に教える立場なので、ときには生徒さんに厳しいことを言わなければならない場面もあります。でも叱ったあとはすぐに切り替えて、楽しい会話をするようにします。言いたいことを我慢するとストレスがたまるので思ったことは言いますが、その後は絶対に引きずりません。生徒さんたちのことは大好きですし、これはやっていることに対する叱責であって、人間性を責めているのではないことはよく理解してもらっています。あくまでも、より良い仕事をするための「注意」であり、感情的な「怒り」ではないので、気持ちがイライラすることもありません。

なるほど。そういえばフィンガーフードブックの撮影のときも(注:本の中に、卒業生68名が参加したコーナーがあります)、なごやかな中にもキリッとした雰囲気だったことを思い出しました。では、専門分野以外のことで、丸山さんがいま注目していることは何ですか?

AIの普及で、働き方が変わるだろうということはだいぶ前から言われていますが、きっとこれからさまざまな分野で本格化していくだろうなと思います。自分の仕事にどうつながるかはまだわかりませんが、新しい形のビジネスを知りたくて、若い経営者の本を読んだりしています。

最後に、これからやっていきたいことや将来の目標は何でしょうか?

フィンガーフード事業やスクールの海外展開です。今も海外から来てくれる生徒さんがいますし、技術提供させていただいている会社もありますが、本格的に広げていきたいです。それから、ケーキ屋さんのようなショーケースのあるディスプレイで、フィンガーフードをテイクアウトできるお店を作りたいな、とも考えています。夢のあるおいしくてきれいなフィンガーフードを、ケーキみたいに楽しく選んで持ち帰ってもらえる専門ショップがあったら、もっと広く知ってもらえるだろうなと思うんです。

インタビューを終えて

以前、雑誌のインタビューで丸山さんにビジネスを始める前のことを聞いたことがあったのですが、お嬢さんの幼稚園の送り迎えの際に入ったカフェで、いつも持ち歩いていたノートに今後やりたいことを書きつけていたという話がとても印象的でした。そのときに書いたことは今、ほとんど実現しているのだそうです。夢と目標をかなえ続ける人生、それには強さと地道な努力が必要ですが、丸山さんはそれを自分で獲得するだけでなく、生徒さんたちにも分け与え、応援しているのが素晴らしいなと思います。ビジネスマンでありクリエイターでありたいと語る、プロ意識のかたまりの丸山さんと、じっくり本づくりで伴走できて楽しかったです。今後も心から応援しています。ありがとうございました!

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