クリエイターズ・インタビュー:「マムール」店主 名津井麻真さん

最終更新: 4月29日

今回のゲストは、目黒通りにあるフレンチ雑貨とアンティークのお店「マムール」のオーナー、名津井麻真(まみ)さんです。アパレルブランドでプレス業務、飲食事業、海外事業などに携わった後、独立。パリの老舗インテリアショップ「メゾン・ド・ファミーユ」の日本上陸時から立ち上げスタッフとして活躍のかたわら、フレンチスタイルのカフェを併設した雑貨ショップを開業。2013年からはライフスタイル雑貨ショップ「マムール」にリニューアルし、この6月で7周年を迎えます。

マムール店内にて。撮影/織田桂子

4月上旬の週末、自宅からのオンラインインタビューでお話をしました。コロナの影響が深刻さを増す状況の中、これまでのこと、これからのことを語ってくださったインタビューです。


「マムール」は、パリの雑貨ショップのようですよね。素敵なマダムが店主で、楽しくお話ししながらショッピングできる、安心感のある一軒家ショップ。

ありがとうございます。はい、私もお客様とお話ししているときが一番楽しいです。今はこんな状況でお店を開けられないのですが、インスタグラムでの発信を見てくださっているお客様とやりとりしながら、商品のご配送をしたりして、わりと忙しく過ごしています。


温かな質感と丈夫さを兼ね備えた「ジアン」の陶器。

名津井さんが考える「マムールらしさ」を改めて言葉にすると、どうなりますか?

「フランスの素敵なものを集めたお店」でしょうか。テーブルウェア、リネン、バスグッズ、小家具など、生活雑貨が中心で、一点物のアンティークやブロカントも扱っています。超高級品ではないけれど、老舗が作り続けている、歴史のある上質なものをご紹介するのがマムール。フランス最古のリネン「シャルヴェ・エディション」のキッチンクロスや、パリの「オー・バン・マリー」のテーブルウェアは、開店当初から扱っています。19世紀から続く「ジアン」の陶器や、中世に創業したガラスメーカー「ラ・ロシェール」のグラス、「マリネット」というブランドが作っている南仏の伝統的なキルト「ブティ」などは、私自身も大好きな定番アイテムです。マムールとは「私の可愛い人」という意味なのですが、愛着の持てる可愛いものをいっぱい集めたい、という思いでお店をつくっています。


古いものも新しいものもひっくるめた大人の可愛らしさのあるセレクトに、名津井さんの審美眼が光ります。

伝統の香りのする上質なフランス雑貨ですね。元雑貨少女(笑)にはたまらない名前ばかりです。「メゾン・ド・ファミーユ」のDNAも感じます。

「メゾン・ド・ファミーユ」時代は、人生で一番働いていた記憶があります。当時の仲間たちとは今も交流があり、一昨年のブランド上陸20周年では一緒にお祝いしました。そうそう、「メゾン・ド・ファミーユ」にいたとき、実は一度田村さんとお話ししたことがあったんですよね。


はい。当時インテリア雑誌の編集部にいて、「パリ雑貨散歩」という企画で取材をさせていただいたのを覚えています。懐かしいですね。フレンチスタイルのカフェも大人気でした。

当時はまだスターバックスも日本に入ってきていない時代で、オープンカフェがほとんどなかったので珍しかったらしく、おかげさまでご好評をいただき、18年間も続けることができました。業績が悪かったわけでもないので、「なんでやめちゃうの?」と言われましたが、年齢的なタイミングで将来のことを考えていた当時の私は「あとどれくらいの間この仕事をやっていくかわからないし、少し目標値を下げることになっても、本当に自分のやりたいことに集中したい。そのほうがお客様や仲間に応援してもらえる」と強く思ったんですよね。


「次の段階に行きたい」と思われた時期だったんですね。

カフェに来てくださったお客様にもすごく感謝しているんですが、雑貨ショップに絞ってからのお客様は、必然的に私と共通点のある方々だけになりました。フランスが好きで、料理と食べることが好き。家にいる時間を大切にする方、家で料理やお花を教えている方、フランスに住んでいたことがある方も多いです。私の選んだものを気に入ってくださるのが、本当にありがたいです。たくさんあるお店の中からマムールをお選びいただき、商品をお買い上げいただき、常連になっていただき、しかも地方からわざわざお越しくださるなんて。そんなお客様は、もはや私にとって親戚に近い感覚です。勝手に抱いている親近感なんですけどね。


買い付けはどのくらいの頻度で行かれるんですか?

通常だと、年に2、3回ですね。現行品は、メーカーの展示会に出かけて商品を選んで、輸入の手続きを行い、アンティークやブロカントは、ディーラーの仲間に協力してもらって、アンティークフェアやオークション、蚤の市を巡って買い付けをします。それを短い滞在期間で一気にやります。今年初めに買い付けをし、ロックダウンになる前にフランスから到着した商品が今、お店に並んでいます。


優雅な世界を提案するお仕事ですが、ショップ経営はその実、とても激務ですよね。買い付けから販売まで、すべての作業を一人でこなすのは本当に大変なことだと思います。長く続けてこられた秘訣や、最も大切にされている姿勢があれば教えてください。

とてもシンプルなんですが、毎日、仕事の優先順位を決めて進めることでしょうか。第一優先は、お客様をお待たせせずにお届けすること。それから、体調管理を徹底することです。マムールは臨時休業の多いお店ですが、私の体調が原因で休んだことは、今まで1日もないんです。当然のことですが、遅刻早退も自分に許さずにやってきました。自分のルールを自分で守ることが、長く仕事を続けてきて身についたと思います。

定番ブランド「シャルヴェ・エディション」のトーション。

心身ともに健康を保つために、心がけていることはありますか?

規則正しい生活、これに尽きます! 海外や地方への出張が多い仕事なので、生活リズムが不規則になりがちなのですが、寝だめはせずに平日も休日も同じ時間に起きることを心がけています。出張などの影響で就寝時間がまちまちになっても、起きる時間を一定にすれば、生活リズムが戻るのは早いです。寝すぎるとかえって疲れるし、貴重な休日を無駄にしてしまった……という罪悪感も精神によくないですしね。いろいろ試して、私の場合はこの方法が元気でいられることがわかりました。

あとは体を動かすことですが、今はスポーツジムにも行けないので、大好きなフランスのDJが毎日配信しているインスタライブを見ながら、部屋で踊っているんですよ。時差の関係で夜9時なので、毎晩自宅でクラブ気分で楽しんでいます(笑)!


今、一番気になることは何ですか?

やっぱりこの話になってしまうのですが、今回のコロナ騒動では、時間の感覚や、暮らしの中における衣食住の比重がどんどん変わってきていることを感じます。時代の変わり目に直面してしまったな、と思いますね。職業や環境、国に関わらず全世界の誰もが影響を受けてしまっています。ここまでのことは誰も経験したことがないと思うので、乗り越えた後にどんな世界になるのかな、ということが、本当に気になりますね。

でもとにかく今は、時代と状況に合った方法で、自分にできることをやっていこうと思っています。たとえば私の場合、SNSの中でもインスタグラムというツールが自分のスタイルに合っているようなので、なるべく毎朝投稿をして、お客様とコミュニケーションを続けています。お客様がマムールの商品を使った写真をアップしてくださるので、それをストーリーに上げたりね。今度、お店から動画配信もやってみようかなと考えています。


どんな状況でも進化し続ける名津井さん、楽しみです。今後、やってみたいことは他にありますか?

何だろう……。昔から、壮大な夢はあまり持っていないんですよね。それより、これからも毎日健康で楽しくがんばっていけたら、と思うだけです。今の状況が終息して、また普通にコミュニケーションを取れる日が来たら、お客様とゆっくり時間を過ごせるサロンを開きたいなと考えています。物を介しての接客だけではなくて、お茶を楽しむ会とかね。

プライベートでは、これから海外渡航はしばらくできないでしょうけれど、オリエント急行で旅をしたいなぁ、とかは考えますね。あと、ずっと家にいたら、いつかまた猫を飼いたいな、と思うようになりました。


そして、お客様に会えなくなってみると、お客様って何と愛おしいものなんだろうと思います。それから、これまで物販の仕事を長くやってきましたが、サロンの先生や専門職の方々を見て「スキルを売る仕事っていいなぁ」と羨ましく思うことがありました。もちろん今もそう思っているのですが、物を仕入れて売る自分の仕事も、なかなか実直でいいものだな、と改めて思い直しているところなんです。これから私たちは、どうしたら楽しく豊かな気持ちで幸せに暮らしていけるのか、みんなで答えを探している時期なんですよね、きっと。



インタビューを終えて

インテリア、ファッション、百貨店業界、食のプロはもちろん、目黒インテリアコミュニティやフランスのお仕事仲間まで、実に幅広い人脈を持ち、みんなから信頼されている名津井さん。人と会うことが制限されている現在、どうされているのだろうと連絡してみると「インスタ通販のご配送に明け暮れています❣️」と元気でおちゃめなお返事がすぐに返ってきました。いつ会っても優しく前向きな笑顔に元気づけられますが、このタイミングでお話しできてよかったです。名津井さんの提案する愛がいっぱいのフレンチ雑貨の世界を、全国のファンがリアルイベントで見られるようになることを心待ちにしています。


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