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ルーツの数冊

(2022年7月8日配信のニュースレターをこちらにも掲載します)


こんばんは。エディターの田村です。 今週はいかがお過ごしでしたか。 1ヶ月くらい前に 「憧れのエネルギー」というタイトルで お送りしたニュースレターがあったのですが、 (自分を現在地に連れてきたのは ちょっとしたきっかけと憧れのエネルギー、 そう考えると昔の自分に励まされますよね、 という話。よろしければこちらを) クリエイターの皆さんには 同じような経験のある方が多いのか わりと反響があって嬉しかったので、 今回もちょっとルーツっぽい話にします。

Photo/Tim Mossholder

皆さんにとって、今の道に進む きっかけになった本ってありますか? 私はそう質問をされても 長い間答えられなかったのですが、 先日、家の本棚の総ざらいをしていて 昔から捨てられずにずっときている 本の束を久しぶりに見つけ、 あぁこれか、と改めて思い出しました。 母の本棚に並んでいた 『すてきなあなたに』(暮しの手帖社、初版1975年)。 『暮しの手帖』の同名の連載をまとめた、 何冊もシリーズで出ていて 今も版を重ねるロングセラーですが、 小学生の頃からなんとなく気になって 本棚から借りては少しずつ読んでいました。 気どらなくてシンプルだけど 上質なハードカバーの装丁。 全ページを彩るセンスの良い線描のイラストと 装丁を手がけたのは、 あの有名編集長・花森安治さん。 編集者の大橋鎮子さんによる文章は、 上品でやわらかな、ちょっと昔の山手言葉風。 ひらがな多めなのも子どもには読みやすく、 文章の中に色彩や音、味わい、手ざわりなどが たっぷり潜んでいるのが楽しくて、 短い文章の一つ一つが きれいなおいしいお菓子のようだと思いました。 高校・大学時代に出会って かなり影響を受けているのは、 イラストレーター・西村玲子さんの 一連のイラストエッセイ本と テーブルコーディネーターの草分け的存在、 クニエダヤスエさんの暮らしのヒント本です。 当時の西村玲子さん、 たぶん40代だと思うのですが、 当時の私の周りにいた大人とは違う 都会に住むおしゃれな大先輩、 といった親近感を勝手に抱いていました。 インテリアやテーブルや手作りや おしゃれや映画の話が面白くて、 これらの本で知った素敵なもの、 今でも好きなものがいろいろあります。 普段はジャージで過ごしてるのに 原宿に古着を見に行こうとか、 自分のキッチンなんてもちろんないのに カフェオレボウルや柳のかごや 白のアンティークリネンを買いに わざわざ自由が丘に行こうとか、 17、18歳に思わせる魅力があったんですね。

一世代前のおしゃれな大人たちが 見せてくれた 素敵な風景に憧れて編集者になり、 クリエイターとたくさん 仕事をさせてもらった。 そこにつながる、いわばルーツの 数冊なんだなぁ、 と思ったことでした。


西村さんもクニエダさんも、 その後仕事でお目にかかる幸運を得ました。 高校生の頃からご著書を読んでいます、 と本をお見せしたら、 嬉しそうににっこりしてくださいました。 皆さんの「ルーツの数冊」は何でしょう?

「こんな本に影響を受けたんです」という話、 もし機会があったら、聞かせてくださいね。 どうぞ良い週末をお過ごしください!

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